« 古代緑地 | トップページ | 生命の海 »

2007年5月10日 (木)

海をはらむ族

ウミヲハラムヤカラ…まさにこの詩的に美しい表現を、ある理系の本で目にしたのは大きな喜びであった。
井尻正二・湊正雄の『地球の歴史』という古い本である。この本の古さは、地学系なのにプレート・テクトニクスやプルーム・テクトニクスがほとんど出てこないほどで、僕は専門家でないので断定できないが、現代の科学から見れば、きっと過去の遺物なのだろうと思う。
しかし、この本の詩的な美しさは、現代でも失われていないはずだ。
石炭紀のシダ植物の大森林を吉田一穂を引用して古代緑地と称したり、造山運動を地球の革命と断じたり、我々哺乳類を「海をはらむ族」と喩えたり…
こういう美しい刺激に満ちた本なのであるが、そもそも僕がこんな古い本を手にしたわけを話すのは、それなりに繋がりが見えて有意義であろうから、まずはそこから話すことにする。
最初に、かの文豪ゲーテ、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが文学者だけでなく、多様な面を持っていたことを知った。
彼は政治家でもあり、哲学者でもあり、宗教家でもあったわけだが、一番の衝撃は自然科学者の面を垣間見たことである。
しかも彼はその方面の主著である『色彩論』において、ニュートン及びニュートン的自然観を批判しているのだ。
ニュートン的自然観とはまさに近代のフランシス・ベーコンやデカルトから始まる機械論的自然観であり、それは現在に至るまで科学の正統であり続けている。
これを知ったとき、僕は直観した、ゲーテを探れば僕の求める新世紀のための自然観の鉱脈を発掘できるであろうと。僕は早速、『ゲーテ全集』の自然科学巻を手に入れ、調査を始めた。
すると、興味深い人物が浮かび上がった。三木成夫、日本の生物学者である。
この人物は富永半次郎に師事し、孔子や釈迦や其角やクラーゲス、そしてゲーテを学んだという科学一辺倒の学者ではない、博識な男であるらしかった。それに前掲の井尻正二の影響も受けていたのだ。僕はそこから入ったのである。
だがしかし、もっとも驚いたのは、なんとこの男が夢野久作の『ドグラ・マグラ』の影響を受けていたということだ!
実は僕は既にそれを読了していたのだ、五木寛之の本から知って以来。
その『ドグラ・マグラ』はまさに狂気の小説である。精神医学をテーマに、時空間を超越したストーリーを乗せ、更に作中で繰り広げられる科学の珍奇な新説、特に『胎児の夢』という論文が重要な役割を果たしていた。
この『胎児の夢』こそ、三木のゲーテ流形態学にも影響を与えた部分であり、「海をはらむ族」とも繋がるポイントであったのだ。
長くなったので、続きは次回へ見送ることにする。

« 古代緑地 | トップページ | 生命の海 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/85610/6370457

この記事へのトラックバック一覧です: 海をはらむ族:

» 知って得するオリコカード [オリコ]
オリコについてお得な情報をお届けします。オリコカードや、オリコカードのポ イント、上手な保険の使い方など調べてみました。 [続きを読む]

« 古代緑地 | トップページ | 生命の海 »