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2007年5月11日 (金)

生命の海

名も知らぬ遠き島より

流れ寄る椰子の実ひとつ

ふるさとの岸を離れて

汝れはそも波に幾月


もとの樹は生いや茂れる

枝をなおかげをやなせる

我もまた渚を枕

独り身の浮き寝の旅ぞ


実をとりて胸をあつれば

新たなり流離の憂い

海の日の沈むを見れば

たぎり落つ異郷の涙


思いやる八重の汐々

いずれの日にか国に帰らん


ー島崎藤村「椰子の実」


遠い記憶をさかのぼってみよう。
今から約六億年前の先カンブリア紀の地球、エディアカラ動物群と言われる海の動物たち…クラゲやイソギンチャクが主役の時代があった。
時代は下り、カンブリア紀にはバージェス動物群、すなわちアノマロカリスたち複雑化した海の生物が出現した。世界はどこでも浅い、同じような海だった。
しかしカンブリア紀の後のオルドビス紀とシルル紀は、井尻正二の言う「泥の海」となった。世界の海は一様でなくなり、そこでは更に生物は多様化し、ついには三葉虫が現れた。
しかし、世界は徐々に胎動し始めた。カレドニア造山運動…それは現在の北ヨーロッパで徐々に始まった。
そんな中、デボン紀に突入し、サカナの時代がやってきた。まさに、この時代の主役は魚類であった。
しかも、この頃の魚類には肺魚のグループが現れ、生物上陸の兆しが見えてきた。
そして追い討ちをかけるように折りしのカレドニア造山運動に伴う海陸バランスの変化、海水中の生物の氾濫と食物の減少が発生し、ついに生物は陸上に上陸した。
そうして現れたのが両生類だ。しかし、両生類もヴァリスカン造山運動により、砂漠や乾燥地帯が増え、爬虫類に取って代わられる。両生類は水陸両用と言えど、水がなければ生活できないが、爬虫類はそうではない。爬虫類は砂漠ですら生きられるのだ。
こうして恐竜闊歩する中世代の幕が開く。
恐竜の時代の終焉はアルプス造山運動が前奏を奏で、隕石がフィナーレになったらしい。こうして新生代、哺乳類の時代がやってくる。


我々の遠い祖先はこのような発展進化を経て、人間に至った。
そしてついに夢野久作は気づいたのだ、人間の胎児はこの生物発展史をなぞっていると。
この発展史は大ざっぱに魚類時代→両生類時代→爬虫類時代→哺乳類時代と進行したが、これは人間の胎児の発展過程と全く同じなのだ。
受精卵は成長して魚のようになり、カエルのようになり、トカゲのようになり、人らしくなる。地球の歴史を追うように。
それに初期の生物は海なしで生活できなかったが、人も含めて獣の血液や体液はその成分が海水とよく似ているし、特に哺乳類の子宮内の羊水は、海水と同じ成分なのだ。我々は遠い故郷の磯の香りに囲まれながら胎児期を過ごすのである、井尻正二はここから哺乳類を「海をはらむ族」とした。
そしてここから更に、夢野は一大仮説を立てる。胎児は生まれるまでの間、地球の誕生から現在までの歴史を祖先の記憶の遺伝として継承し、その歴史絵巻を夢の中で繰り返しているのだという。

三木成夫はこれに更に続けるが、その話は次回。

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コメント

これは面白いわァ。

やばいわ〜!!むっちゃ興味わく話だ!!

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