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2009年1月23日 (金)

こち亀の話

『こち亀千両箱』という選集をブックオフで買った。感動モノばかりの両さん少年時代の話ばかりが入っている。

読んでいて感じたのは、話の構造自体はどれも似たり寄ったりだけど、そこに作者の東京への思い入れが入ることによって、こんなにも胸を打つんだ、ということ。

「友情の翼!」で、両さんが「東北からの列車は上野が終着駅だからな」「夢を抱いて東京に来る人もいれば夢叶わず東京を去る人もいる。上野駅にはいろんな人生の物語がある」とセンチメンタルな言葉を吐くとき、僕は作者の東京への愛が見事に表現されている、と思った。

今回読み直して驚いたのは「おばけ煙突が消えた日」で、珍しくナレーションが入っているのだが、その一人称が「ぼく」であり、文脈からそれが両津勘吉その人とわかる。「ぼく」と称さなければ壊れてしまいそうな儚い思い出、昭和という時代、そうしたものをここから感じとれる。そうして“おばけ煙突”も解体していったのだ。

両津勘吉という日本人のある種の理想形態は、「坊っちゃん」や「寅さん」の血族といっていいような、江戸っ子の系譜上にある。その祖先には「弥次喜多」だったり「勝小吉」がいたり、僕らが思い浮かぶような江戸のヒーロー像がある。

浅草という土地自体、江戸文化が最後まで保存された場所だった。永井荷風が愛したのもそれだ。けれども関東大震災で浅草十二階が倒れた時、浅草に残った江戸文化も消滅した。

東京は次に東京大空襲においても壊滅し、二回のカタストロフィを経験したことになる。だから東京で江戸の残りかすを見つけることは難しいだろう。しかしそれでもなお、僕らの中に江戸っ子像が残っていることが、読み終えて感じたことだ。

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コメント

おばけ煙突の完全カラーは圧巻!!


〇〇回記念のノスタルジー話だと『光の球場!』が一番好き(JC82巻)

○○回記念の話では、マドンナ的な女性も多く出てくるから、寅さんと似てるね。人情人情。

「光の球場」では、ウグイス嬢のヒロインが恋人のバッターをコールするシーンが忘れられないね。

君たちはコメントするだろうと思った。

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